着物の染め直し、染め替え
汚れてしまってクリーニングしても着れなくなった着物、着物の地色や柄粋が派手になって処分しようとした着物、お母さんやおばあちゃんから譲り受けた大切な着物、お嫁入りに実家から持たされた白生地などに染め直し、染め替えをすることで、あなた好みの色に着物が新しく生まれ変わります。着物を無駄にする事無く、着物に新しい命を吹き込みます。染め直しは粋な贅沢です。
事例17. 羽尺と着尺と勘違いの反物を染めました。
約30集年前、嫁入りの時に親から持たされた白生地をずっと、箪笥にしまい込んでいたそうです。今度、習い始めた茶道、そのお茶会があるので、その時に着用出来る様に染めと仕立てを頼まれました。
白生地の反物の巻きの太さで着尺用と勘違いしたまま、生地を雀色に染め、染め上がれば、湯のし、そして、縫い紋(芥子縫い)で、紋名【浮線蝶(フセンチョウ)】を背中に一つ入れました。そして、仕立てです。
この時にこの反物が羽尺用と気付きました。お客様の連絡、羽織がコートに仕立てる様にお勧め致しましたが、染め色の出来栄えを大変、気に入っておられて、どうしても着物として着用したいと言われました。苦肉の策として(同じ生地があれが良かったのですが、無いので)、もう一反、違う生地を同じ雀色に染めて、二反の生地を使って色無地に仕立てました。 仕立ての事は伊藤和裁でコメントを書きました。
事例16. 家紋が一つある色無地を染め直しました。
箪笥にしまい込んでいた光沢もなくなった仕立て上がりの色無地です。桜色(さくらいろ)です。
洗い張りをして、仕立て直して着用されても十分良いのですが、全て解いて、今の寸法に違う色に染めて仕立て直したいと今回は、藤色(ふじいろ)に染め直して、仕立て直しました。
地模様が生地に入っていますので、見る、写る角度によっては藤紫色(ふじむらさきいろ)に見えます。背中にひとつ紋(上がり藤)が入っていますので、ここは紋糊で伏せて、家紋が染まらない様にして染め、家紋自体も白く胡粉を塗りました。
染め上がり後、今の寸法に仕立て直しましたので、着心地も良いと思います。
藤色とは紫色を明るく青みがけた色です。藤紫色とは藤色の青みの少ない明るい色の事を言います。桜色とは紅色の一番淡い色の事を言います。
事例15. 地模様のある藤色の色無地の白銀色への染め直し
私どもで仕立てをしてくれている方からの染め直しの依頼です。
仕立て上がりの色無地を解いて染め直しました。色目は藤色(ふじいろ)です。10年前に呉服屋さんで購入、今回、白銀色(はくぎんいろ)の落ち着いた色目に染め変えました。
藤色の上から、白銀色をこのまま、直に染めても、白銀色にはなりません。なので、藤色を抜染して、生地を白生地に戻す必要があります。それからの白銀色染めになります。
仕立てはご自分で出来るので、染め直しのみのでした。
藤色とは、紫色を明るく青みにイメージした色です。白銀色とは、銀色の美しさを白さを持って表現される色の事です。
事例14. 古いシミの付いた仕立て上がりの帯の染め直し
可愛らしい桃色の地色にカトレアの花柄、着物がたくさん売れていた時代にはいろんな花柄の帯がありました。今では、大変貴重なこのカトレアの名古屋帯、古いシミで、このままでは締める事が出来ません。お客様もお気に入りなので、『どうにかしてほしい。』と相談を受けました。
まずは、帯を解いて、洗い張りをし、古いシミや、絵羽筋汚れが帯全体にどうなってるか、チェックします。染み抜きでは直りそうにもないので、染め直しと金彩加工、そして、帯の仕立て直しをお勧めしました。お客様に染め直しする色目を染め見本帳で選んで頂き、染め直しした後、古いシミの上に金彩加工をして、シミを誤魔化し、仕立て直しました。
事例13. 花柄の柿色を地味に
たまには、こんな注文も受ける場合があります。『梅の色が派手なので、地味目になりませんか?』 どんな場合もそうなんですが、電話やメールでやり取りしても空論にしかなりません。まずは、お着物を見て、出来るか、出来ないか。出来ないなら、ほかに何か方法は無いか。考え探ります。
予算などもありますので、生地全体は暗くしてみました。柄と地色を分けて、柄をひとつひとつ、地味にしていくと予算がかかりますし、日数もかかります。
出来上がりをお客様に確認頂き出来上がりとなりました。
事例12. 年齢に合わせ渋く染め直し
仕立て上がりの訪問着を染め直して、年相応の訪問着として着用したいと相談と注文を頂きました。
やはり、少し明るめに写ります、この竹の柄の訪問着。お客様からは、染め見本として二つの色糸を預かりました。
第一候補の色目に染めました。竹の柄には染まらない様に柄伏せをしていましせん。
竹の柄も渋く、第一候補の色目が染まっています。
染め上がり後、お客様に染め上がりの確認をしてもらっています。
事例11. 上方落語家さんの着物の染め直し
上方の噺家さんの仕立て上がりの着物を染め直しました。
『こんな着物を直せませんか?』と持ってこられました。
ビフォーの写真を見て頂くと着物全体が汗や舞台の照明などで、地色が変色しています。着れなくなったので箪笥に放置していて、しばらくするとこんな状態になってしまいます。染めを染め見本通りにするのが、一番大事ですが、そう染まるようにする。料理で例えると『下ごしらえ』も大変重要な作業になります。
アフターの写真を見ていだだくと新品のように着物が蘇ったのが分かると思います。
このお客様も、今では、このような事をしなくても、たくさんの仕事着を持っておられますが、やはり、駆け出しの時は、仕事着一枚の遣り繰りも大変だったようです。
事例10. 紬の反物を地味な色目に染め直し
呉服屋さんからの注文が入りました。
オレンジ色の紬着物を地味な色に染め直しほしいと相談を受けました。
事例9. 伊と幸の白地レース地の反物を染めました。
白地のレース地、ブランド『伊と幸』の生地です。薄紫に染めました。
生地は凹凸があり、地模様になっています。
生地の凹凸がキツイのに、染めたダマリも目立たなく、上手く染まっていると思います。
仕立ては伊藤和裁で、羽織に仕立て上げます。
事例8. こんな白地のお着物を持っておらてるお客様に染め替えの提案です。
着物は染め直しが出来ます。
おばあ様ぐらいなら、このような白地の訪問着を一枚か二枚は嫁入りの時に持たせられたと思います。でも、年齢が経つと白地が派手なって、着れなくなったりもします。
今回の様に胴裏は茶色く変色してしまい。普通なら、こんな着物は日の目を見ません。柄を生かし染め替え、同時に胴裏を新品にして、仕立て直しという方法で、娘さんのサイズの着物に蘇ります。 今回はそんな染め直しの事例です。
事例7. 着物の色目が派手になったので、染め直しました。
私ども、伊藤和裁の仕立てをしてくれている方からのご依頼です。
『若い頃に着ていた仕立て上がりのピンク色の色無地着物、色目が派手で染め変えてほしい。』と相談を受けました。染め変える色の染め見本は縫い糸の色です。無地染めの見本は、染め見本帳などを使いますが、今回の様に染めたい色の見本の持ち込みも大丈夫です。せっかく、染めるんですからお客様の染めたい好みの色に染めたら良いと私は思います。
事例6. 雨漏れのシミ
ネットで雨漏れのシミを直してくれるところをあれこれと検索して、私共の処にお問い合わせが来た訪問着です。電話で色々と付いたシミについて、話しますが、電話で判断できる場合とやはり、お着物のシミを見てみないと判断がつかない場合があります。今回のケースは着物が雨漏れでどれだけ広範囲にシミになっているかが想像つきませんでした。当然、お着物自体も雨水で縮んでいます。それもどれだけ縮んでいるか分かりません。雨シミで着物が茶色くなっているとの事ですので、茶色の成分も電話だけでは分かりません。お着物を送って頂き、見せて貰うことにしました。よく目立つ所では左袖の後、袖山の辺り、両肩、お尻の辺りが茶色く染みています。写真では見難いですが、その他にも着物全体にありました。茶色い成分は木造建築の木のアク、樹液が雨水と混ざって着物に付いていました。このシミは着物クリーニング(丸洗い)をしても取れません。洗い張りをしても綺麗には直りません。なので、お客様と相談して、お着物を解いて染め直す事にしました。染め見本(染匠)をお客様の処に送り、染める色を決めて頂き、巻きぼかし染めと言う染め方でお着物を染めました。(染める色が今よりも濃い色になる為、そのまま何の工夫もしないで染めてしまいますと着物の絵柄が染めに負けてしまい、せっかくの菊、椿、桜の植物文様の絵柄が目立たなくなってしまいます。なので、絵柄の部分は染めない方法で染めました。)
事例5. 道行コートの染め
雨コート生地で仕立てた道行コートの染め直しのご依頼が来ました。五十代のお客様です。大変、珍しい仕事です。(と言うのは、雨コートの生地には雨が降っても雨が弾く様に防水加工が多くされています。以前はこの防水加工が染め直すときに邪魔をして、上手く染めることが出来ませんでした。【今は技術が進んで染めにくい事はありません】その事で雨コートを染める方が少なくなってしまいました。)
コートの色が派手になってきたので落ち着いた色に染め直しをして、道行コートから雨コートに仕立て直して欲しいとのご希望でした。防水加工を生地から取り、今の色を一度、抜いて(取ってしまって)、お客様の好きな色に染め直して、仕立てをするとお客様のご予算がオーバーしてしまいました。なのでお客様とご相談して、色を抜かずに、今かかってる色の上から違う色をかける事にしました。私共の方から、紫系、茶色系、渋い赤系、の中からどの系統にするか、お客様と一緒に決めて、後は私共、お任せで染めさせて頂きました。お客様は茶色系と仰っておられましたが、今の色の上から茶色系を染めるとイメージ的にお客様には合わないと思い、私どもは紫色系をお勧めしてみました。お客様も納得して紫色系に決まり染め直しました。仕立てる寸法も、雨コートに仕立て替えますので、身丈以外はこのコートの寸法で仕立てることになりました。この道行コートを解く前にこのコートを採寸し、雨コートに仕立て上がるほどの布丈が裾の返りに残っているか、この道行コートの裾を調べ、仕立てる前に染め上げた色をお客様に確認して頂き、(お客様に『紫色系にして良かった』と喜んで頂きました)そして、伊藤和裁で道行コートから雨コートに仕立てました。(道行コートの時の裾の返り分、布丈一杯に身丈を出して、雨コートに仕立てました。)
事例4. 羽織りの染め直し
小紋柄の羽織です。幾何学文様の網目文様の様な、捻り輪模様の様な、江戸っ子が好みそうな絵柄です。『朱の色目が派手になったので落ち着いた色に染め直したい』とご相談を受けました。この色目が可愛らしいので、女児のお孫さんがいらっしゃったら、伊藤和裁で子供用の着物に仕立て直しても、と思いましたが、余計なことは言わず、どんな色に染めるか、どんな染め方にするか、一度、羽織りをお預かりして私共のほうで染めの職人と相談させて頂きました。この可愛らしい色目を薬品を使って、抜いて(取って)しまうとこの文様自体も消えてしまう可能性があります。なので、色目は抜かず、この色目の上から、色をかけることにしました。濃い色をかけ過ぎると今度は文様が目立たなく成り過ぎる可能性がありますので、その辺りを加減しながら染める色をお客様に提案しました。一つは、緑色をかける。そうすると朱色の所が茶色っぽく、黄緑色の所が青緑色っぽく、黄色の所が黄緑色っぽくなる。もう一つは、紫色をかける。そうすると朱色がエンジ色っぽく、黄緑色がブルーグリーン色っぽく、黄色が茶色っぽくなる(5枚目の写真)。この事をお客様にお伝えして、緑色か紫色かどちらの色を染めるか決めて貰い、紫色をかけることになりました。(~色っぽく、と書いたのは、染め職人も大体の染め上がる色目は想像出来るのですが、実際のところ、この色になりますとはっきりした事は言えません。どんな色に染まるのかは、染め上がってみないと分からないので、この様に書かせて貰いました。着物や羽織などを染める場合、お客様によって、向き不向きがあることを知っておいて下さい。)染め上がりの色を確認してもらい、次に仕立てにかかりました。身丈以外はこの羽織の寸法(サイズ)で仕立てました。身丈の寸法はお客様ご指定で布丈いっぱいに仕立てました。(分かりにくいかも知れませんが、ビフォーとアフターの袖底から裾の写真を見比べて頂いたら身丈の長さの違いが分かると思います。)
事例3. 小紋着物の染め直し
この小紋着物を染め直して欲しいと相談を受けました。紅梅色地に野菊が着物一面に咲いています。可愛らしい小紋着物です。このまま、お召しになっても十分に遜色無くお似合いでした。なので、『染め直さなくてもよろしいのではないですか』と一度、お断りをしましたが、『今は色目も模様もあまり、気に入っていないので、やはり染めて下さい。お任せします。』と再度、頼まれました。色目も絵柄も今はお気に入りでは無い様なので、思い切って染めた色で絵柄が見えなくなるくらい濃い色で染めてみました。猩猩緋(しょうじょうひ)に染めました。(鮮やかな濃い深紅色です。)色無地のようになりました。写真では見難いのですが、ちゃんと野菊の模様の残っています。そして、今のお客さんの寸法(サイズ)に、袖丈の長さも前回の寸法では少し長めのようなので、袖丈の長さも1尺3寸にしてあります。きっちりと仕立てをしました。裏地の八掛けも山吹色のボカシを付けました。あまりの着物の変化にお客様も大変驚かれていました。小紋着物が色無地着物に大胆に変わりました。全然、別の着物の様です。
事例2. 染め加工
私どものホームページをご覧になって、お嫁入りの時に持たされた白生地を染めてほしいとご相談を受けました。染めの見本帳(染匠)を東京のご自宅まで郵送し、お染になる色を決めて頂いて染め加工をしました。そして、羽織に仕立て上げました。
生地に竹の柄の地模様が入った白生地です。染め上げますと鮮やかに竹の地模様が浮かび上がって、染めを引き立てています。羽織に仕立て上げた写真を見て頂くと生地の凹凸、光の加減で染めと地模様のコントラストが絶妙です。
お客様に大変、喜んで頂きました。ありがとうございました。
着物を染めたり、染め直すのも着物を楽しむひとつの方法です。
事例1. 黒留袖の染め直し
着物染み抜き専科への相談です。
『2ヶ月後の結婚披露宴に着用したいので直してほしい』と持って来られました。先々代から受け継がれた大正時代の黒留袖です。銀糸を使った刺繍で扇文様が描かれています。扇の地紙の文様は四君子(竹、梅、蘭、菊、)・十字詰め亀甲・七宝の御目出度い吉兆尽くしです。
着物クリーニングでは直りません。染み抜きをしても直りません。一枚目の写真で見てください。黒留袖全体が色ヤケしています。黒留袖の染め直しをすれば綺麗に直ります。着物を解き、湯のしをして、柄ふせをして、黒色(紅下)の引き染めをしました。(黒留袖全体が黒紅くなっていると思います。)
家紋が糊粉をはがしたとき、全体に薄くなったので家紋を筆で直し、そして、伊藤和裁で仕立てをして披露宴に間に合わせました。
お客様に大変喜んでいただきました。
柄ふせとは、染めたくないところに糊粉でふせることをいいます。(今回ならば銀糸の刺繍の部分と家紋の部分をふせました。)